ホクロ治療の研究室

ホクロ治療について

そもそもホクロとは何でしょう

ホクロ(黒子)とは、単純黒子や小型の色素細胞母斑のことをいいます。単純黒子は、表皮基底層部にメラノサイトが一層に増えた状態で、後述の境界部型色素細胞母斑の初期病変と考えられます。色素細胞母斑は色素性母斑や母斑細胞母斑とも呼ばれ、メラノサイトが幾層にも増殖した一種の良性腫瘍です。色素細胞母斑は、先天性と後天性に分けることができ、私たちがホクロと呼ぶ病変の多くは、後天性の色素細胞母斑にあたります。

先天性の色素細胞母斑には非常に大きなものもありますが、大きさは加齢とともに変化することはありません(体の成長に合わせて同じ比率で大きくなります)。一方、後天性の色素細胞母斑は、加齢とともに数が増え、大きさもわずかながら大きくなります。初期には平らだったものが盛り上がってくることもあります。大きくなるとはいえ、良性病変であるホクロが1㎝以上に育つことはほとんどありません。先天性色素細胞母斑の多くは、生まれたときから母斑細胞が真皮内部にまで存在しますが、後天性色素細胞母斑は、初めは表皮と真皮の境にできます(境界部型)。そして、加齢とともに母斑細胞は真皮へと移行し(複合型)、表皮成分がなくなり真皮内病変だけになるものもあります(真皮型)。

ホクロとは
 

ホクロ治療の前に知っておいてほしいこと

ホクロの治療においてよく聞かれるトラブルは、
・「簡単にあとかたもなく取れる」と聞いていたのに、取ったら傷が残った
・何度も治療しているのにいつまでたっても完全になくならない
というものです。

単純黒子や境界部型色素細胞母斑の多くは、ほとんど傷を残さないで除去することが可能です。しかし、前述したように色素細胞母斑の母斑細胞の多くは真皮内にも存在します。表皮だけを傷つけても、表皮細胞は再生しますからほとんど傷にはなりません。しかし、真皮は表皮のように再生することができず、真皮に傷をつけると瘢痕組織と呼ばれる傷跡を残すことになります。時々美容外科の広告の中に、レーザーを使えば全く傷にならずに簡単にホクロを取ることができるかのような誤解を与えるものを目にすることがあります。多くの色素細胞母斑の治療の場合、最小限の瘢痕にする努力はできても、瘢痕をゼロにすることはできません。治療して傷が全く残らなかったとしても、それはあくまで結果論にすぎません。唯一瘢痕にならない方法があるとすれば、Qスイッチレーザー治療ですが、これは適応となるホクロが限られるだけでなく、根治性からみると不確実な治療法です。仮に色を消失することができたとしても、母斑細胞は取り残されているために再発の可能性が高い方法です。

ホクロに治療において、治療法による瘢痕の大きさと根治性にはある程度相関があります。確実に取ることに重点をおけば傷が大きくなり、傷を最小限にすることに重点をおけば根治性が悪くなる(再発しやすくなる)ということを理解しておかなければいけません。美容目的にホクロを取る場合は、根治性に配慮しつつ瘢痕をできるだけ最小限にする努力が必要です。ホクロの大きさや部位、色の濃さや隆起の有無などを考慮して、それぞれのホクロに応じた治療計画を立てます。

 

ホクロの治療方法

1.切除+縫合

ホクロをメスで切除して、傷を縫合する方法です。ホクロに限らず、皮膚の良性腫瘍を除去する際の基本的な治療法です。後述のくり抜き切除とともに、1回の治療で完全にホクロを除去することができます。しかし、この方法の欠点は、長い傷を残してしまうということです。手術後の線状の傷の長さは、ホクロの直径の3倍以上の長さになってしまいます。短い傷にこだわると、傷の両端にドッグイヤー変形と呼ばれるふくらみが残ることもあります。また、眉毛や目、鼻や口元などの構造物に近いホクロを単純に切除+縫合すると、周囲の形が歪むことがあります。

ホクロの切除+縫合

この方法は、比較的大きな色素細胞母斑や、毛が多数生えるホクロ、顔以外の体のホクロ、シワが深い年配の方のホクロの治療などに適応があります。また、ホクロではない悪性の病変を疑う場合は、切除を行って細胞の検査をします。
顔の大きな色素細胞母斑の場合は、単純な切除縫合ではなく、局所皮弁という方法を用いて傷をふさぐことがあります。

皮弁 Double-Z形成術

縫合技術によって傷跡にも差がでます。できれば形成外科専門医の治療を受けていただきたい方法です。

手術後は、軟膏と肌色テープで覆います。顔は5日後、顔以外は7日後に抜糸します。
抜糸後は、2ヶ月間テープ固定を行います。

2.くり抜き切除

メスやパンチを用いて、ホクロよりわずかに大きくくり抜いて切除する方法です。あまりホクロぎりぎりに取ると再発の原因になります。縫合せずにそのまま自然に治す場合と、1~2針縫合する場合があります。比較的目立たない傷になりますが、丸く少し凹んだ傷が残ると考えておいた方がいいでしょう。

この方法は、顔の小さなホクロ(特に5㎜以下)に適応があります。鼻や口元などの構造物の近くでも行うことができます。

治療後は、軟膏と肌色テープで覆います。後述の蒸散などに比べて、手術後に出血を起しやすいことが欠点です。傷がふさがるまでの期間は、ホクロの大きさによって変わりますが、概ね1~2週間くらいです。

3.高周波メス(サージトロン)や炭酸ガスレーザーによる焼灼・蒸散

サージトロンと呼ばれる高周波治療器や炭酸ガスレーザーなどを用いて、熱で組織を炭化・乾燥させてホクロを除去する方法です。ホクロ周囲の組織に対する熱ダメージを少なくすることによって、最小限の傷でホクロを治療することができます。一般の手術に使われる電気メスでは周辺への熱ダメージが大きく、この方法には適しません。

この方法は、美容面に配慮したホクロの治療法として最もよく行われる方法です。

この方法では、深く除去すれば凹みが残りやすくなり、除去が浅すぎると母斑細胞を取り残して再発します。どの深さまで治療するかは、治療時の医師の判断に委ねられます。そのため、治療する医師の経験と技術が非常に重要になります。

小さいホクロ、浅いホクロでは目立つ傷にならずにきれいに治る可能性が高くなります。また、大きくてもドーム状に盛り上がりのあるホクロでは、比較的きれいに取れることがあります。特に鼻の輪郭に沿ったホクロは、治療跡が目立ちません。

一方、母斑細胞が深くまで存在するホクロでは、くり抜き切除と同様に少し凹んだ傷になります。平らでも比較的大きいホクロは、後述のQスイッチルビーレーザーと組み合わせて治療した方が目立つ傷にならずにすむ可能性があります。
青色母斑など色素が非常に深いところまで存在することが治療前からわかっているようなホクロの場合は、初めから切除を勧めます。

治療後は、傷がふさがるまで軟膏と肌色テープで覆います。テープの上からお化粧することができます。
病院によっては、ホクロを焼いたあとはそのまま乾かしてかさぶたを取らないように指導されることがあるようですが、これは傷を早くきれいに治すという点からはお勧めできません。高周波治療や炭酸ガスレーザーによって治療した真皮にまで傷害が及んでいる傷は、傷を乾燥させない方が創の収縮・上皮化がスムーズに行われ、結果的によりきれいに治ります。傷がふさがったあとは、お化粧もじかにできます。治療した部分には、必ず日焼け止めを使用し、色素沈着を予防してください。
傷がふさがるまでの期間は、ホクロの大きさによって変わります。1~2㎜のホクロで約1週間、5㎜のホクロで約2週間くらい時間がかかります。傷がふさがってからもしばらく赤みが残りますが、時間とともに消退していきます。

4.Qスイッチルビーレーザー

ホクロ治療の中で、唯一傷を残さずに取れる可能性がある方法です。母斑細胞がもつメラニン色素を破壊することによって、ホクロの色を薄くすることができます。Qスイッチレーザーの中でもルビーレーザーはメラニンへの吸収性が高く、日本人のメラニン色素性病変に対して最適のレーザーです。ルビーレーザーによる治療では、ホクロの色が消えたからといって必ずしもホクロがなくなったとは限りません。また、1回のレーザー照射で完全に消えてしまうことは少なく、通常は数回の照射が必要です。レーザー照射の間隔は、1ヶ月を目安にします。母斑細胞が深くまで存在する場合は、薄く目立たなくはなっても完全には消失しないこともあります。

この方法は、平らなホクロに適応がありますが、蒸散治療と組み合わせることによって盛り上がりのあるホクロにも応用することがあります。平らなホクロでも蒸散と併用することによって、最小限の凹みで早くホクロを消失させることが可能になります。

 

症例

1.切除+縫合
症例1-1

【術前】

矢印

 

症例1-2

【術後6ヶ月】

紡錘形に切除して縫合しました。形成外科的縫合によって写真で見てもほとんどわからない瘢痕で治っています。
2.切除+縫合(局所皮弁法)
症例2-1

【術前】

矢印

 

症例2-2

【手術デザイン】

    矢印
    症例2-3

【術後1ヶ月】

    矢印
    症例2-4

【術後5ヶ月】

下まぶたや鼻に近い大きな色素細胞母斑であるため、単純に切除すると下まぶたや鼻の変形が予想されます。また長い1本線の傷は引きつれを生じて目立ちます。この症例ではdouble-Zplastyという方法を用いています。1ヵ月後の傷がまだ赤い状態を見ると、傷の形がわかると思います。赤みがひくと傷はほとんどわからなくなりました。まぶたや鼻の変形もありません。
形成外科の研修を受けていない医師の中には、1本の直線の傷がいつでも理想だと信じている方もいますが、頬においてはむしろ長い傷はかえって目立ちます。(当院HP「瘢痕形成術」も参考にしてください。)
3.くり抜き切除
症例3-1

【術前】

矢印

 

症例3-2

【術直後】

矢印

 

症例3-3

【術後4ヶ月】

生まれつきの色素細胞母斑です。上口唇中央のホクロとしては比較的大きく、蒸散でも凹みは避けられないと考え、根治性の高いくりぬき法を選択しました。くりぬき後に1針巾着縫合を行っています。瘢痕はできますが、凹みや再発もなくきれいに治っています。
4.くり抜き切除
症例4-1

【術前】

矢印

 

症例4-2

【術後3ヶ月】

くり抜き法としてはかなり大きめなホクロですが、ほとんど凹みにならずに治っています。この症例でもくりぬき後に巾着縫合を行っています。傷の赤みは今後さらに目立たなくなります。
5.蒸散
症例5-1

【治療前】

矢印

 

症例5-2

【治療後7ヶ月】

大きなホクロ2ヶ所を蒸散治療しています。一つのホクロは直径10㎜で後天性のホクロとしては最大級の大きさでしたが、2ヶ所ともほとんど傷を残さずにきれいに治っています。よく見ても傷はほとんどわかりません。7ヶ月経過しても再発はありません。蒸散治療においては、使用する器械が優れていても、その使い方が悪ければいい結果は得られません。治療する医師の経験と技術によって結果に差がでます。
6.蒸散
症例6-1

【治療前】

矢印

 

症例6-2

【治療後4ヶ月】

鼻尖は傷跡が目立つ部位なので、極力凹みが残らないように治療します。
7.蒸散
症例7-1

【治療前】

矢印

 

症例7-2

【治療後6ヶ月】

大きさ・色が異なるホクロを治療しましたが、5ヶ所ともほとんど傷にならずに治っています。
8.蒸散+Qスイッチレーザー
症例8-1

【治療前】

矢印

 

症例8-2

【蒸散後6ヶ月】

矢印

 

症例8-3

【Qスイッチレーザー追加後】

比較的大きなホクロであるため、できるだけ凹みにならないように蒸散とQスイッチレーザーを組み合わせて治療しました。
9.Qスイッチレーザー
症例9-1

【治療前】

矢印

 

症例9-2

【Qスイッチレーザー2回後】

2回のレーザー照射で全て消失しています。
Qスイッチレーザーは傷もできず簡単な方法ですが、すべてのホクロがこのように簡単に治るわけではありません。今後は再発に注意する必要があります。
10.Qスイッチレーザー
症例10-1

【治療前】

矢印

 

症例10-2

【Qスイッチレーザー1回後】

赤い唇の平らなホクロや色素斑は、Qスイッチレーザー治療のいい適応です。正常な赤い唇にはメラニン色素が存在しないため、ホクロや色素斑の部分にだけ集中してレーザーの光を反応させることができます。レーザー後の色素沈着も生じないため、肌色の皮膚の部分よりきれいに治すことができます。
 

鑑別が必要な皮膚病変

ホクロを治療する場合、忘れてはならないのが悪性腫瘍との鑑別です。
悪性が疑われる場合は、病変を切除して細胞を病理検査で調べます。蒸散やレーザー治療は適応になりません。
特にホクロと似ている悪性腫瘍には、悪性黒色腫(メラノーマ)と基底細胞癌があります。

1.悪性黒色腫

悪性黒色腫はメラノサイトが悪性化したのもので、非常に転移を起しやすく、皮膚癌の中で最も悪性度が高い病気です。初期の悪性黒色腫は、ホクロとの鑑別が非常に難しいとされます。
悪性黒色腫を疑う診断のポイントは
1、全体の形が非対称で、境界が不整。
2、大きさが7㎜以上。
3、急速に大きくなった。
4、黒・茶・青などの色が混じり、色にムラがある。
5、一部が盛り上がるなど、形が変化してきた。
6、墨汁のように周辺に色が滲みでてきた。
などが挙げられます。

ただし、上記の特徴はある程度の大きさがある場合は明らかですが、非常に小さい時点ではまだ特徴があらわれていないことがあります。しばしば、ホクロは悪性化するのかということが問題にされますが、生まれた後に生じた一般的なホクロが悪性化することは珍しいと考えられています。つまり、ホクロが悪性化するのではなく、悪性黒色腫は初めから悪性で、初期はホクロのように見えていただけと考えられます。しかし、生まれつき存在するホクロは、稀ですが悪性化することがあります。特に、濃い毛が生えた大きめのホクロは、早めに切除しておくことをお勧めします。

2.基底細胞腫

メラノサイトではなく上皮細胞の癌で、基底細胞癌ともいいます。転移をほとんど起さないので命にかかわることは少ないのですが、局所再発を非常に起しやすく、手術で完全に切除することが重要です。

 

イボの治療

「イボ」のことを医学的には「疣贅(ゆうぜい)」といいます。
代表的なイボには、ウィルス性の「尋常性疣贅」や「老人性疣贅」などがあります。
しかし、患者さんの多くは、盛り上がりのある皮膚病変をすべて「イボ」と称していることも多く、その治療法は実際に診察して診断をつけてからでないと決められません。

老人性疣贅や尋常性疣贅など表皮内にとどまる皮膚病変は、うまく治療すれば傷を残さずにきれいに治すことができます。最も簡単な方法は液体窒素を使用した冷凍凝固法です。冷凍凝固法は、ウィルス性の尋常性疣贅の場合は第一選択の方法と考えられますが、色素沈着や取り残しを起こしやすい治療法であるため、老人性疣贅の場合は蒸散治療を主に行います。上皮性の病変は、ホクロではなくシミに準じた治療期間で改善します。

真皮に及ぶ良性隆起性病変を治療する場合は、盛り上がりのあるホクロを治すのに準じた治療法を行うことができます。イボが大きい場合や完全除去を望む場合は、メスによる切除を行います。小さい場合は蒸散法を選択することもあります。

 

ホクロ治療の研究室|治療費|いしい形成クリニック